2012年8月29日水曜日

もうPV、UUを追いかけるのはやめよう。MPM(Marketing Performance Management)のススメ(1)

少し間が空きましたが、前回の続き。

マーケティング活動の貢献度は直接算出するのは難しい。
そのためにKPIを設定するが、KPIは直接KGIに対して直接の因果関係がないケースがほとんど。
得てしてPVを稼ぐための広告出稿や営業成果はない展示会に出展みたいな企画や
ブログにきわどいタイトルを付けるなんかもそういった手法の一つ。

じゃあどうするのというのが今日のテーマ。

広告流入からコンバージョンに至るまでだけではなくその後の顧客接点すべてを一気通貫で見れるようにシステムを組んじゃえばいいんじゃないのというのが今回ご案内したい1つのアイデア。
海外の情報なんかも含めていろいろ探していると「マーケティングパフォーマンスマネジメント(Marketing Performance Management)」という考え方がそれに相当するらしい事がわかりました。

ただ、MPMも十分な情報があるわけではなくある程度エッセンスから類推するしかない状態だったので、
今回ご紹介したい方法は手持ちのアイデアをつなぎ合わせたオリジナルの手法となっています。
ざっと言いたい事を箇条書きにします。

(1)アクセス情報と顧客情報の突き合わせ
(2)すべての顧客接点の集約
(3)統計学的手法を取り入れた貢献度の分配
(4)短期収益ではなくLTVで判断する
(5)価値指標と利益指標を分ける
(6)コンテンツの償却計算によるROI計測
(7)キャンペーンの階層管理

最終ゴールとしてはこの手法を取り入れる事によって

認知・啓蒙などの直接収益を求めないマーケティング活動の可視化
成果計測の難しいソーシャルメディアを使ったマーケティング活動の可視化
Webサイトのコンテンツ追加など維持管理のパフォーマンスの可視化

あとはコストもきちんと計測していくことで
1コンテンツあたりの期待収益」
を円単位で計測することが可能になると思っています。

一つのテーマにたくさん言いたいことがあるので、一度に全部は書ききれず小出しにまとめていきます。

2012年8月17日金曜日

KPIとKGIの間にあるモヤっとした何かとマーケティング活動の評価

「まだ始まってもいねぇよ」とキッズリターンばりに誰かつぶやいてくれそうですが、最近、「冷やし中華始めました」ばりに「インバウンドマーケティング始めました」みたいなアピールをする人たちがわらわらと出てきているのが目に付き始めました。中にはインフォグラフィックを勝手に翻訳・加工するようなひどい事例もあるようで、こういったブームに乗ろうとする雨後のタケノコ、柳の下のドジョウ達にはなんだかうんざりする気持ちを感じていますが、同時に、せっせとタケノコ狩りやドジョウ掬いをしている方々には本当に頭が下がる思いです。

 余談になりますが、ほとんどログインをしなくなったTwitterに今日久しぶりにログインしてみました。当時フォローしていてメインに交流していた方々はほとんどFacebookに移ってしまったのもあって、ニュースサイトの公式アカウントとボット、あとは「フォローしたっけなぁ」という見知らぬアカウントのつぶやきがあるばかり(もちろん今も精力的に活動している方々もいらっしゃいましたが)。
なんだか、「人間が姿を消した東京、弱肉強食というルールが支配する動物たちが支配していた」なんてコンセプトの「TOKYO JUNGLE」を思い出しました。すみません。


と、検索にヒットしそうなキーワードをちりばめてインバウンドマーケティングっぽいことをやりつつ、自分がメインで言いたい事を続けさせていただきます。

マーケティング活動をする上で、どのような組織、サービス、業態でも効果を継続的に上げていくためには、正しくパフォーマンスを測定する事が求められます。
それを指標、数値化したのが、KPI(key performance indicator)やKGI(key goal indicator)で、多くのマーケティング担当、営業担当はここの数値を目標に近づける事を日々の活動としている訳ですが、多くのマーケティング活動の場合、このKPIとKGIには直接の関連性が無い場合が多いのが問題でした。

例えばECではない一般のWEBサイトを担当するマーケティング業務の場合、自分の担当領域のKPIであるPVやUUもしくは資料請求、問い合わせなどのCV数は定量的に把握でき、それを目標値にすることはできます。しかし、WEBサイトが最終的なKGIとなる売上目標にどう貢献し、そこからどの程度収益があがったのかを可視化する事はなかなか容易ではありません。

このマーケティング部門にとっての(一時的な)ゴールであるWEBサイトのアクセスを増やすためには様々な施策、例えばコンテンツの追加、リスティング出稿やSEO対策などを行わなければならないのですが、当然どのような施策を行うにも当然コストが発生します。行う施策によってはブログだからコストはかからない、CMSだからというケースもあると思いますが、CMSを更新する人件費やシステムの維持管理費用は当然発生します。

その掛けたコストに対してどの程度効果が上がったか、PVやUUが上がったかについては数値が指標化しやすいWebメディアであればきちんと可視化できていた領域だと思います。
「今月はリスティング広告経由でアクセスが○○伸び、資料請求が○件あった」
「新しく作ったコンテンツでPVが1人あたり○○伸びた」など。
きちんと可視化、数値化できる事で、効果的にKPIを上げるための次の分析や改善のサイクルが回すことができました。

ただ、これは「KPIとKGIの間にきちんと因果関係が成立している」限りにおいてうまく機能します。ただ、多くのマーケティング現場の場合、話は単純ではありません。よくあるケースでいうと、「単純に資料請求数を目的にすると資料請求の『質』が下がりパフォーマンスが悪化する」など、「KPIとKGIの間には何らかの因果関係があるが、KPIとKGIの間の因子Xについては測定が難しい」というようなケースがほとんどです。

もうひとつ、KPIを見るだけでは評価が難しいのは掛けたコストに関して正しい効果を得られているかという点です。例えばFacebookの「いいね」を1件増やすためのコストが「150円」だったとして、150円のいいねが最終的に売り上げにつながるまでの方程式が導き出せなければ150円が妥当かどうかという評価はできません。B2B企業などで資料請求や問い合わせから営業接点があり、ある程度ゴールまでの距離が近いレベルであれば妥当性の評価はそれほど難しくありませんが、ゴールまでの距離が遠い場合のパフォーマンスの評価は非常に難しくなります。「何らかの因果関係はあるようだが、KPIを上げるためにどの程度コストを投下するのが妥当かわからない」というケースもいろんな企業で見かける事だと思います。

KPIとKGIとの因果関係をきちんと説明できること、KPIを上げるためのコストはKGIに照らし合わせて妥当であるかを説明できること、この2点がこれまでのマーケティング活動では十分ではありませんでした。

ちょっと長くなりそうなので次回に続きます。

2012年8月15日水曜日

Facebook経由ではとりあえず家が売れなかったけど・・・

新築マンションがfacebook経由で14戸も売れた理由-メディアマーケティングブログ

<以下元記事から引用>
神奈川県川崎市の新築マンション「プラウドシティ元住吉」のマーケティングの中のひとつのプロモーションとしてファンページが開設されたのは今年3月末でした。6月末までの販売戸数200戸は即日完売したそうです。
購入者にアンケートを取ったところ、販売のきっかけに14人(7%)の購入者がfacebookと回答(複数回答あり)したそうです。   

このマンションや実施した企業について直接どうこういうつもりはありませんが、この記事を読んで「Facebookで家が売れるんだ~」と思うバカはいないと思うんですが、いかがなもんでしょうか。

タイトルの付け方があざと過ぎるため誤解が生まれるかもしれませんが、引用した記事にもあるように「複数回答」で「販売(=購入)のきっかけにした」人というかなり広い間口で購入のきっかけを聞いているアンケートの回答で、「7%(14人)」というのはお世辞にも高い数値とは言えないと思います。

また、記事内には言及されていませんが、「新聞広告やSUUMOの反響と比べて少ないのは当たり前。」とクライアントのコメントが引用されていることからも、残りの93%については他のマーケティング活動で集めてきたもので、Facebook経由の販売貢献は期待や思惑より低かった事がうかがわれます。

結果として、現時点ではFacebookを「新規獲得の販促チャネル」として活用する試みはうまくいかなかった、と結論づけるのが妥当だと思いますが、私個人としてはFacebookを使ったコミュニケーション自体はうまくコントロールしながら続けた方がいいんじゃないかと思います。

私もマンションを買った身なのでわかりますが、高額な買い物をしたり、重大な決断をした後には多くの人は「私の決断は正しかった」「他の物件ではなく、このタイミングで買ったのは正しかった」という意識と、それに対しての被承認欲求が生まれます。新築マンションの場合こういった欲求を満たす場は従来であればマンション専門の掲示板だったりするのですが、Facebookページ上でそういったコミュニケーションの場をディベロッパーのコントロール下に置く事で、認知的不協和を極力発生させず、いい循環のコミュニケーションが生まれる可能性があるわけです。

購入した人への情報提供、コミュニティサイトとして活用させるだけでなく、例えば第1期で購入した人に対して積極的にこのFacebookページで情報交換などすることで、購入したことの満足感を与え、それがさらにコミュニティの中で波及することで、第2期以降に販売する人への正しい情報提供のチャネルとして活用したり、販売完了後にクローズドなページにして管理会社に引き継ぐ事で、そのままマンションのコミュニティチャネルとして活用するなんてアイデアもいいかもしれません。

要は、「新規成約に貢献するチャネル」と置くのではなく、「すでに成約した人」を中心としたコミュニケーションの場として提供する、もしくは既に購入した人を通じて新たな評価を獲得していくのが今回のケースはもっともあった使い方じゃないかなぁと思うわけです。

おそらくこの企画を進めたPR会社、広告代理店が、「これからはFacebookですよ」的な感じで営業して「Facebookで家が売れた」結論ありきでこの記事も書かれたんじゃないかと推察します。当初の目論見は外れたかもしれませんが、うまく使えばいい形にワークする可能性があります。ぜひ引き続きFacebookの活用を続けていかれることをお勧めします。